ようやく開放された瞬間、私は酸欠でふらりとした。
シオンはそれを分かっていたかのように、私を抱きとめる。
なんで朝からこんな事をしてくるのか。
私はシオンが分からなくなった。
この前から一体何なんだろうと思う。
そして、普段なら何とも思わないこの行動に私はなぜか無性に腹が立った。
でも勿論それについて文句を言う事はしないけれど、行動が読めないシオンがとても怖い。
呼吸が落ち着くと、私はシオンの腕をすり抜けて床に落ちた鞄を拾った。
今度はあっさりと腕を離したシオンは、そんな私をじっと見つめながら、小さくこう言った。
「・・・・約束を覚えてるか?」
私はその言葉に、顔を上げてシオンを見る。
約束・・・・?
シオンが何のことを言っているのか、私にはさっぱり分からなかった。
「覚えてないのか?」
「・・・・。」
シオンとの約束。
全くと言っていいほど記憶にない。
私が何も言えずにシオンを見つめていると、シオンは呆れたような顔をした。
「まぁ、そのうち思い出すだろ。」
シオンはそう言って、また片方の口角だけを上げて笑う。
その綺麗で残酷な笑みに、何だか酷く心を乱された。
私はコートを引っつかむと、シオンを残したまま逃げるように部屋を出た。

