叶う。 Chapter1





その人も何かを感じたのかは分からないけれど、何故かその手を離そうとしなかった。

ほんの数秒間だろうけれど、私達はそのまま見つめ合った。

茶色い髪の隙間から見える漆黒の瞳は、なぜか吸い込まれそうなほどに私の瞳をしっかりと見据えていた。

その感覚は何故かとても懐かしい気分になった。
どこかで会った事があっただろうか?


「和也は私の幼馴染なんだよ。」


記憶の彼方に飛んでいきそうな私の思考は、凛のその言葉で現実に戻ってきた。
咄嗟に手を離して、瞳を逸らした。


「そうなんだ。」


私がそう言うと、和也と呼ばれたその人はにっこり笑ってこう言った。


「腐れ縁ってやつだな。」

「そうそう。で、かなうは凛の彼女だからお前ら変な気起こすなよ。」


凛はそう言って、全員を見渡した。
途端に晃がブーイングだった。


「凛ずるい。こんな天使を自分だけのものにしようとは!」

「晃、あんた彼女にチクるよ。」

「それは勘弁。」


その二人のやりとりが面白くて、私は思わず微笑んだ。
なんだか、レオンとママを見ている気分だった。