叶う。 Chapter1




一応、週4日ほどお手伝いの五十嵐さんが来てくれるから、私なんてたいしたことはしていないのだけれど。

特に最近は発表会が近いから、夜中までピアノを弾いていることが多いので、ほとんど家事を手伝えてない。


でも、ママは私が家事を出来ないことを全然気にもしてなくて、むしろピアノに集中出来るように、五十嵐さんに出勤日数を増やしてもらったくらいだった。


ママは休みの日、よく私の演奏を聴いてくれる。

そして、必ず褒めてくれるし、色々な曲をリクエストしてくれる。

だから私はピアノをずっと続けてきたし、どんなに辛くっても辞めたいなんて思えなかった。


幼少期に何をしても怒られることしかなかった私には、ママに褒められることがこの上なく幸せだったのだ。


だから今年こそは、自分の為ではなくママの為にグランプリをとりたいと少なからず思っていた。

グランプリをとれば、きっとママは喜んでくれる。

そう思うと、やっぱり練習にも力が入る。
だけれどそれは物凄く大変な事なので、最近の私は気が抜けなかった。