叶う。 Chapter1




私は玄関に入ると、ローファーを脱いで揃えて端に寄せてから、家に上がった。

こんな当たり前な事が、ここに来た時の私には全く出来なかった。


もうすぐ小学校だというのに、右も左も、箸の持ち方すら知らなかった私に、ママは本当に根気強く色々なことを教えてくれた。

時には叱られる事もあったけれど、それでも私はママに感謝してもしきれないくらいだし、本当にママを尊敬している。


保護されたばかりの時の私は、極度の対人恐怖症だったらしいけれど、何故か今の家族にだけはほんの少しだけ反応が違ったらしい。

理由は分からないけれど、私は密かにその外見に安心感を得たんじゃないかって、今は勝手にそう思ってる。


シルバーブロンドの綺麗な髪に、ブルーの瞳。
すらっと背が高く、誰がどう見てもママは海外のモデルさんみたいだ。

明らかに日本人とは違う容姿、それは幼い私にも理解出来ることだったから。

初めてママを見た人は、きっとママが日本語を喋れないと思うに違いない。

だけれどママは日本語がペラペラだし、今は近所に5店舗ほどの夜のお店を経営しているやり手のシングルマザーでもある。