叶う。 Chapter1





目の前にはニコニコ顔の店員さん。

「アンナさんって言うんですか?素敵なお名前ですね!」

店員さんは、親しげにそう言って自分のネームプレートを指差した。

「橋本朋美(はしもとともみ)です。」

そう言ってまたニッコリと笑った。
笑顔の店員さんは、ちらりと見える八重歯がとても可愛くて印象的だった。


どうしよう。

私もその笑顔につられて曖昧に笑った。
ママが戻ってくるまでの30分間、こうして見詰め合ったままでいるわけにもいかない。
なんとか、しなくちゃ。

心ではそう思っているけれど、声が出ない。


だけれど、店員さんはやっぱりスペシャリストだった。

さっき、ママが手にしたワンピースをすっと手に取って自分に合わせて私を見る。

「赤がお好きなんですか?」

「・・・え?」

「さっき、お母様がこちらを合わせてらしたので、赤がお好きなのかなーって。」

「えっと・・・ママがいつも赤とか黒が似合うって選んでくれてるんです。」

「そうなんですね、じゃあこういうのはどうですか?」

店員さんにそう言われて、ゆっくりと店員さんの後を追う。