目の前にはニコニコ顔の店員さん。
「アンナさんって言うんですか?素敵なお名前ですね!」
店員さんは、親しげにそう言って自分のネームプレートを指差した。
「橋本朋美(はしもとともみ)です。」
そう言ってまたニッコリと笑った。
笑顔の店員さんは、ちらりと見える八重歯がとても可愛くて印象的だった。
どうしよう。
私もその笑顔につられて曖昧に笑った。
ママが戻ってくるまでの30分間、こうして見詰め合ったままでいるわけにもいかない。
なんとか、しなくちゃ。
心ではそう思っているけれど、声が出ない。
だけれど、店員さんはやっぱりスペシャリストだった。
さっき、ママが手にしたワンピースをすっと手に取って自分に合わせて私を見る。
「赤がお好きなんですか?」
「・・・え?」
「さっき、お母様がこちらを合わせてらしたので、赤がお好きなのかなーって。」
「えっと・・・ママがいつも赤とか黒が似合うって選んでくれてるんです。」
「そうなんですね、じゃあこういうのはどうですか?」
店員さんにそう言われて、ゆっくりと店員さんの後を追う。

