叶う。 Chapter1





ママはハンガーをラックに戻すと、店員さんにこう声を掛ける。


「ねぇ、この子の服を買いたいのだけれど、この子いつもあまり自分で選ばないの。だから、今日は自分で選ばせたいの。色々アドバイスしてあげてくれる?」

ママの突然のその言葉に、私は驚いたと同時に死刑宣告を受けたかのような衝撃が走った。
私が自分で服を選ぶなんて、そんなこと出来る訳がない。


「アンナ、たまには自分の欲しいと思った服を買いなさい。」

「え、でも私、選べない。」

「大丈夫よ、好きな服を買えば良いの。」

「無理だよ・・・」


私は小声でママにそう訴えた。
だけれど、ママは私の耳元に口を近づけて小さな声でこう言った。

「せっかくお友達が出来たのに、これからはお友達と買い物したりしたくないの?分からない、出来ないじゃなくて、やってみることも大切よ。」


ママはそう言って私の頬にキスをした。

「それじゃあ、お願いね。30分ぐらいで戻ってくるわ。何かあったら電話してね。」

ママはそう言い残すと、唖然とする私を置いてお店を出て行ってしまった。
後を追いたい衝動に駆られたけれど、何とか思いとどまった。

お友達と買い物をしたくないの?、と言ったママの言葉に凛ちゃんの顔が浮かんできたからだ。
凛ちゃんとお買い物、それは私にとってとても魅力的な響きだった。