「言葉にするのは、難しいことかもしれないけど、簡単な事で良いんだよ。ありがとう、とか、嬉しい、とか。アンナは友達にそう言われたら、どう思うか考えてごらん。」
私は先生の言葉を、もし凛ちゃんに言われたらどう思うのかを想像する。
それはどれも嬉しい気持ちになるに違いない、と思った。
「難しく考えるから、色々と余計なことを考えてしまうんだよ。だから、アンナが相手に伝わるか不安に感じるなら、思ったことを口に出してごらん。そうすれば、今よりもっと色々なことが見えてくるよ。」
先生はそう言って、目を細めて私を見た。
その眼差しは何だかとっても優しかった。
―――1時間の診察と言う名の雑談を終えて、私は先生にお礼を言って診察室を出た。
私は先生に、きちんと来週も来るように釘を刺されたけれど、色々と相談出来て嬉しかったので来週も必ず来ると約束した。
私が先に診察室を出ると、ママと先生は何やら少し会話をしていたけれど、ママの目を見つめて話す先生の視線がなんだかとても熱を帯びているように感じる。
なんとなくだけれど、結構前から先生はママの事が好きなんじゃないかって思う。
だけれどそれは、私にはどうこう出来る事じゃないので、私はいつも見てみぬ振りだ。
大人の恋愛事情は、私にはまだ難しすぎた。

