先生はまたカルテに何かを書き込んだ。
そして私は、ふと昨日の出来事を思い出した。
「先生、あのね・・・」
私の声に先生は視線を上げて、私の目をしっかりと見つめる。
「また、白と黒になったの。」
「視界の話かい?」
「・・・目の前が、黒と白だったの。」
「それが起こった時、どんな時だったか話せる?」
「・・・・。」
昨日のことを思い出し、一瞬身震いする。
もしあの場にシオンが居なければ、私はきっとモノクロの世界に閉じ込められたまま、気を失っていただろう。
世界がモノクロになると、私は酷い眩暈を起こして意識を失う。
「大丈夫だよ、アンナ。思い出さなくて良い。」
私の様子から何かを察したのか、先生が優しくそう言った。
「向き合うことも大切だけど、忘れることも大切だよアンナ。特にアンナは色々なことを経験してきたんだ。焦る必要ないんだよ。ゆっくり少しずつ、記憶を塗り替えていこう。」
先生はそう言って、また優しく私の目を見つめた。

