叶う。 Chapter1






先生はまたカルテに何かを書き込んだ。

そして私は、ふと昨日の出来事を思い出した。


「先生、あのね・・・」


私の声に先生は視線を上げて、私の目をしっかりと見つめる。


「また、白と黒になったの。」

「視界の話かい?」

「・・・目の前が、黒と白だったの。」

「それが起こった時、どんな時だったか話せる?」

「・・・・。」


昨日のことを思い出し、一瞬身震いする。
もしあの場にシオンが居なければ、私はきっとモノクロの世界に閉じ込められたまま、気を失っていただろう。

世界がモノクロになると、私は酷い眩暈を起こして意識を失う。

「大丈夫だよ、アンナ。思い出さなくて良い。」

私の様子から何かを察したのか、先生が優しくそう言った。

「向き合うことも大切だけど、忘れることも大切だよアンナ。特にアンナは色々なことを経験してきたんだ。焦る必要ないんだよ。ゆっくり少しずつ、記憶を塗り替えていこう。」

先生はそう言って、また優しく私の目を見つめた。