私のヒーロー

「本当に馬鹿……」

「確かに馬鹿だな」



誰もいないはずの屋上から
そんな言葉が返ってきた。



「姫条くん」



下に目をやれば
姫条くんがいる。


“爽やかな笑顔”も
“不敵な笑み”も何もない。


ただ真剣な
顔つきで私を見ている。




「お前は馬鹿だ。
そんな事は知っている」



そう言いながら
上に来る姫条くん。



「何しに来たの……。
悪いけど今は
悪口を聞く気分じゃ……」



言いかけた言葉が
止まったのは姫条くんのせい。


姫条くんが
私を……。
強く抱きしめているせい。