私のヒーロー

頬に感じる男の手が……
唇に感じる男の温もりが……
耳に届く男の息遣いが……


ぜんぶ……気持ちが悪い。



「やっ……嫌っ……」



ジタバタと暴れても何の意味もない。


男はそんな私を嘲笑うかのように
上から見下ろしていた。




「お前の言う通り……。
俺はアイツの足元にも及ばない。


アイツは何もかも持っている。

“王子”の地位もファンも
そして……こんなに可愛い彼女までいる」



そう言って私を見つめ
そのまま顔を近づけてくる。




「だからさ……
1つくらい奪ってもいいだろ？」

「それが……私って訳？」




キスができる距離にある男の顔。


でも……
私は怯えることなく睨みつける。



こんな奴に……。
負けてたまるか……。




「あぁそうだ。

アイツが奪われて1番哀しむのは何か……。
何がアイツにとって大切か……。

ずっと考えてきた。
それでようやくお前だって気付いたんだよ」




私が……。
優輝の弱点だって言いたいの……？