「……」

「気持ちの整理はついたか?」




目の前には一軒家がある。

ここは私の実家だ。


でも目の前にしたら
少し怖くなってきた。



だけど逃げない。
大丈夫だもん。


私は力強く頷く。




「じゃあ行くぞ」



優輝はインターフォンを鳴らした。


バクバクと激しく動く私の心臓。




「はい」



懐かしいお母さんの声が聞こえてきた。
優輝は軽く私を前に押す。



「亜樹です……」

「亜樹!?」



私の声を聞いたら
インターフォンが切れた。



そして
ガチャッと扉が開いた。



「亜樹!!」

「お母さん……?」



いきなり抱き着いて来た
お母さんに私は戸惑っていた。


お母さんに抱きしめられた
思い出なんか私にはない。


だからか
私は泣きそうになる。