私のヒーロー

人が少なかったから良かったけど……。


恨みがかった目で睨めば
片手を顔の前で揺らしながら謝る鈴香。


まったく……。




「でもさー……。
本当にあんたは恋した方がいいって」

「どうして？」



恋なんて想像すらつかない。

子どもの頃から
ヒーローにしか
興味がなかったから
恋なんてしたことがない。


する意味も
よく分からない。




「……あんたには
幸せになって欲しいから。
愛情をたくさん貰って
誰よりも幸せになって欲しいから」



鈴香は今にも
泣きそうな顔をしていた。


たぶん……。
私の家庭環境のせいだろう。


両親が仲良くなかったせいか
私は“愛情”というものが分からない。


家族との幸せの思い出だって
数えるくらいしかない。


それを全部知っている鈴香は
私の為を思って言ってくれている。




「……努力してみるよ」

「……うん！！」




鈴香は心から私の幸せを
願ってくれているのだろう。


だから
私は……それに応えなければいけない。