「なぁ……」

「……なに?」




優輝は私を抱きしめながら呟く。

その声は今にも消えてしまいそうな
小さい小さい声だった……。




「浅木との約束って何だよ……」

「え……」



稜也との約束……。

“杉下センパイたちに
嫌がらせをされるかもしれない”
っていう事を優輝には秘密にする約束。



……自分から稜也に頼んどいて
私が言う訳にはいかない。


それに……。
優輝は優しいし……。

そんな事を知ったら
心配するに決まっている。


だから……。




「何でもないよ?
……大したことじゃないから心配しないで?」



私は優輝には言えない。
心配かけたくないもん……。


実際……大したことじゃないし。
……大丈夫だよね?




「……そうか。
……ならいい」



優輝の寂しそうな声に
気付かない振りをして私は優輝に抱き着く。



ごめんね優輝。

隠し事は嫌だけど……。
私にはどうしていいか分からないの……。


ズキンと痛む胸を
無視して私は心の中で謝った。