私のヒーロー

神崎は……なんとなく
安藤 蒼太に似ているのかもしれない。


でも……。
似ても似つかない。


だってコイツは
俺を裏切ったりはしないから。




「……ありがとな……亜樹」

「私は何も……って!?
今……名前で……」




表情がコロコロ変わる奴だな……。



「駄目なのか?」

「だ……ダメじゃない!!」

「そうか。
……俺も名前でいい」

「え!?」




何をそんなに驚く必要があるんだ?
片一方が苗字なんて不公平だろう。




「お前は
俺の名前を知らないのか?」

「知ってるよ!!
稜也でしょ!!」

「あぁ」

「……これから……
よろしくね……稜也!」



照れたように笑う亜樹に
俺の心は温かくなる。




なぁ……。
俺はもう1度……
人を信じてもいいよな?


いや……。
信じる。


亜樹の優しさを。
亜樹の正義を。



もう……この河原は
“最悪な”思い出の場所なんかじゃない。


亜樹との
“最高の”思い出の場所だ。