ぺピン

京香は何度も兄の名前を呼んだ。

そのたびに、春馬は傷ついた。

(兄貴の代わりとして、京香を抱いているんだ…。

これはボランティアなんだ…。

もう少し言うなら、人助けなんだ…)

殺してしまうかも知れない。

死んでしまうかも知れない。

そう言った京香を止めるために、自分は彼女を抱いている。

「――一馬、さん…!」

叫ぶように兄の名前を呼んだ京香に、
「――京香…」

春馬は抱きしめた。

春馬の目から、涙がこぼれ落ちた。