ぺピン

「好きな人…」

京香の頭に浮かんだ人物は、ただ1人だけだった。

「へえ、本当にいるんだ」

春馬がニヤリと笑った。

「そ、そんなんじゃないわ!

その人、つきあっている人がいるし…」

「ふーん、かなわない恋ってヤツか。

まあ、いいんじゃないか?

断る口実にはなると思うし、相手も逆上しないだろう。

じゃ」

春馬はそう言って手を振った後、その場から立ち去った。

「変わった人だわ…」

春馬の後ろ姿を見送った後、京香は呟いた。

これが、春馬との出会いだった。