恭汰の後ろ姿を見送った春馬は、
「確かに、京香がウザがるほどのまじめ人間だな」

毒づくように呟いた。

「ハルおじさん、まだー?」

都の声が聞こえたので、
「おう、今行く」

春馬は答えると、ドアを閉めた。

「目黒春馬、か…」

マンションを出た後、恭汰は小さな声で呟いた。

彼は京香の義弟――つまり、京香の夫の弟――で、都のおじさんにあたる人物だと言っていた。

京香がいない間の都の面倒は、春馬が見ているのだろう。

「それにしても…上杉さん、こんな時間なのにどこへ出かけているんだろ?」

恭汰が腕時計に視線を向けると、もう少しで9時になろうとしていた。