すぐにうなずくことができず、困った顔をしている理由はただ1つ。

娘の都の存在だ。

幼い娘を放って置いて夜に出かけるのは、母親からして見たら難しいことだろう。

定時まで仕事を終わらせて帰っているのは、彼女のためでもあるのだから。

「すぐに返事が欲しいって言う訳じゃないんだ。

上杉さんの意見をちゃんと考えてくれるそうだから…」

そう言った恭汰をさえぎるように、
「今日の帰りまでに考えます。

それまで待っていてくれませんか?」

京香が言った。

「えっ…ああ、いいよ」

恭汰は首を縦に振ってうなずいた。

「では」

京香は頭を下げると、その場から早足で立ち去った。