それから数年後のことだった。

温かい太陽の日差しを浴びながら、京香は公園のベンチに座っていた。

「ママー」

すっかりお姉ちゃんの顔になった都が京香に向かって手を振った。

京香はその手を笑いながら振り返した。

都の隣には、まだ幼い彼女の弟である東(アズマ)がいた。

生まれた時はよくわからなかったが、東が成長するたびに京香は彼の父親が誰なのか理解し始めていた。

(東のお父さんは、きっと先輩なんだわ…)

一瞬だけ恭汰の顔が頭の中に浮かんだが、関係ないと言うように京香は首を横に振って恭汰を頭から追い出した。

「京香」

自分の夫になった春馬がやってきて、京香の隣に座った。

「パパー」

春馬に気づいたと言うように、都と東がベンチに歩み寄ってきた。

自分には大切な家族がいるのだからと、京香は春馬と一緒に笑いながら我が子を迎えた。