スマートフォンの中に入っているデータは、もう2度と戻らないことだろう。

当然、京香を脅すネタになった写真もなくなってしまったはずだ。

今日修理から戻ってくることになっているが…もういっそのこと、新しいスマートフォンに買い替えた方が手っ取り早いかもしれない。

(上杉さんと一緒の時間を過ごすのは、もう無理なのかも知れないな…)

証拠がなくなってしまった以上、京香を脅す必要がないと言うことである。

もういっそのこと、京香への思いを断ち切ってしまった方がいいのかも知れない。

どうやったって、京香は自分の方を見てくれないのだ。

彼女は夫が亡くなった今でも、夫のことを思い続けて生きている。

もう、京香のことをあきらめてしまった方が1番手っ取り早い方法なのかも知れない。

重い躰を引きずるように、恭汰は部屋を後にした。