ぺピン

「都は?」

そう聞いてきた京香に、
「もうとっくに寝たよ」

春馬は答えた後、シャツのポケットに手を入れた。

「何よ、それ?」

春馬が京香の前に何かを差し出してきた。

薄い袋に入っている粉薬のようなものだった。

「今日、製薬会社の派遣社員の女の子が店にやってきたんだ。

今月で契約が切れるから、働いていた記念に会社から盗んできたんだってさ。

試作中の睡眠薬だそうだ」

京香は春馬の手のひらにある睡眠薬を観察するように見つめた。

「勝手に盗んじゃっていいの?」

そう言った京香に、
「俺に言うなよ、盗んできたのは向こうだ」

春馬が呆れたと言うように答えた。