スマートフォンをカバンに入れたところで京香が気づいた。

「何ですか?」

そう聞いてきた京香に、
「いや、何も…」

恭汰は首を横に振って答えた後、帰り支度を始めた。

「じゃ、お疲れ様でした」

京香はそう言った後、カバンを持ってオフィスから立ち去った。

彼女の後ろ姿を見ながら、恭汰は思った。

(今日も春馬って言うヤツと一緒にいるのかな?)

彼は京香の義弟で、彼女が仕事をしている間は代わりに都の面倒を見ているのかも知れない。

恭汰は息を吐いた後、
「お疲れ様でしたー」

カバンを持ってオフィスを後にした。