おばの立場である京香が都を引き取ったのは、兄の子供だからと言う理由だ。

「私は血の一滴でも髪の毛1本でもいいから、一馬さんが欲しかった。

この子は一馬さんのDNAを受け継いでる。

一馬さんの血を分けたこの子を、手放す訳ないじゃない…」

まだ幼い都を抱きしめながら、京香は言った。

東子と一馬が交通事故で亡くなってから、今年で5年目を迎える。

春馬は専門学校を卒業した後、美容師になった。

京香は大学に通いながら都を育て、今年の6月に中途採用で不動産会社に就職した。

都は7歳になり、地元の公立小学校に入学した。

時間は経って、それにあわせるように周りも変わった。

なのに、京香の心は初恋に縛られたままである。

一馬が亡くなった今も、京香はまだ初恋を捨てることができないでいる。