視線を向けると、京香は眠っていた。

春馬はベッドから抜け出すと、床のうえに散らばっている服を身につけた。

腕時計で時間の確認をすると、4時だった。

勤めている美容院の今日の出勤時間は、10時だった。

(今から家に帰って、シャワーを浴びて、着替えてから向かえば間にあうな)

そう思った後、
「じゃあな、京香」

眠っている京香の頭をなでた。

「――んっ…」

それがくすぐったいと言うように、京香は寝返りを打った。

その様子を見た後、春馬は部屋を後にした。

家を出ると、夏の朝の心地いい風が躰を包み込んだ。

春馬はその風を躰の中に吸い込んだ後、自宅へと向かって歩き出した。