涼しい顔をしていることがなぜか悔しく目の前にある遥の服をグッと握りしめた。
いつまでそうしてただろうか
本当は一分にも満たない時間のはず、でも私には何十分にも感じられた。
私の背中にまわっていた遥の腕の力がふっと緩んだ。
もう行ったのかな?そっと顔をあげると意地悪な笑顔を浮かべて私の顔を見下ろしている遥と目があった。
『…………なによ』
「さっきの実は嘘」
さっきのって………まさか
『………人来たっていうの嘘だったの?』
「ごめん、餞別だよ餞別!………明日、帰るんだろ」
怒ろうと思って睨んだ遥の顔はそのからかう口調と違って少し悲しげで
でもそれを押し殺して笑う遥はなにかを諦めることに慣れているみたいで切なくなった。

