『ちょ、いった!なにするのよ!』
「バーカ、口塞いでたら喋れるわけねぇだろ。ほんとにバカだな夏希は」
私の方を軽く睨みながら言われた言葉は正論で言葉に詰まった。
どーせ、バカだもんね!
拗ねて顔を逸らした私に遥が口を開く。
「で、何しにきたの?別れの挨拶?」
『そうだったらどうする?』
笑いを含んだ様な声になぜか苛立ちを覚えてからかうつもりで言った。
どーせ早く帰れとか言うんでしょ、なんて思いながら返事を待つけど一向に返ってこない。
あれ?
微妙な沈黙が続き不思議に思って遥の方に顔を向けようとしたときだ。
急に視界が真っ暗闇に包まれて身動きがとれなくなる。
『あ、あれ?なにこれ』
「しっ!黙ってろ」
頭の上から降ってきた思ったより近い距離で聞こえてきた遥の声に思わず息を止めた。
やっと状況が飲み込めてきた
私は今遥に抱きしめられているんだ。

