もう、ダメだ。

心臓が早く脈打ちすぎて、倒れそう。


「やべっ! もう、戻らな! おい、シィ!」


ケンジ君のその言葉で救われた気分だった。



2人が出て行ったとたんに静まり返る美術室。

わたしの頭の中には、さっきの会話が何度もリピートされている。


『一緒に』……って、深い意味はないよね。

『“みんなで”一緒に』って意味だ。


うん、きっとそうだ。

そう言い聞かせて、スケッチブックを手に取った。


窓の外では、サッカー部の練習が既に始まっていた。

それを眺めながら、スケッチブックを開く。

高校に入ってからもう4冊目になる。

この4冊目は、だいたい同じような絵ばかりになってしまった。


『人物画は苦手』……なはずだった。