「ちぃちゃん! おそーい!」


食堂に入るなり、ユカリちゃんが手を振っているのが見えた。


「ごめん、ごめん」


ユカリちゃんの向かいの空いている席に座った。



2年生になって1ヶ月が過ぎた。

最初は緊張していたこのメンバーで過ごすお昼休みも今ではかなり慣れてきた。


「ちぃちゃん、どこ行ってたん?」


そう尋ねてきたのは、わたしの隣に座っているケンジ君。

小柄で童顔。

性格も無邪気な小学生がそのまま大きくなったような感じ。

わたしにとっては、このメンバーの中では一番気兼ねなく話せる男の子だ。


「美術室。ちょっと用事があってん」


「ちぃちゃん、美術部やもんなぁ。なぁ、今度オレをモデルに絵、描いてーや」


「うーん。ごめんね……。人物画って苦手やねん……」


それは本心だった。

人物を描くのがあまり得意じゃないわたしは、いつも風景ばかりを描いていた。


「そっかぁ。残念やなぁ」


ケンジ君がホントに残念そうに呟いたその時……。