――ふぅ……。


誰もいない美術室で、小さく深呼吸する。

昨日買ったばかりの真新しいキャンバスを眺めている。

まだ一点の染みすらない、真っ白い生地。


そっと目を閉じてみる。

そこはまだ何も生まれていない――白い……白い世界。


何を描きたい?

自分に問いかけて、頭の中でイメージしてみる。

浮かんできたのは……。

あの雪の日の中庭の景色……。



「あ……。もうこんな時間か……」


キャンバスを棚に片付けて、美術室を出た。


もうみんなご飯食べてるかな?

急ぎ足で食堂へと向かった。