コロちゃんのことは、目の前にいる友達の誰にも話したことがない。


初めて出会ったあの渡り廊下のことも、窓から眺めていた中庭の景色も……

わたしには、大切な宝物みたいな気がしてた。

それを小さな箱に入れて、自分だけが知ってる胸の奥にしまいこんでおきたかったんだ。


だから、誰にも言わない。





その翌日。

みんなであんな話をしたせいか、ふいに気になって久しぶりに窓の外を覗いた。

コロちゃんはもちろんのこと、中庭には誰もいなかった。

自分でも驚くぐらい落胆してしまう。



その後も何度か覗いてみたけど、彼らが姿を現すことはなかった。


もう季節は冬だもん。

こんな時期に中庭で過ごす人なんかいないよね。



コロちゃんは3年生だったかもしれない。

だとしたら、もうすぐ卒業だ。

きっともう、あの姿を見ることはないんだろうな。



そう思って、静かに窓を閉めた。