なぜかその時、ふとユカリちゃんの顔が脳裏に浮かんだ……。


その瞬間、目を開いた。

急に体中の神経が目を覚まし、気付くと両手でシィ君の体を押していた。


シィ君もわたしの異変に気付いたようで、すぐに体を離してくれた。



2人の間に距離ができたとたん、体の熱が冷めていく気がした。


なんで……?

シィ君……。

なんでキスなんかしたの……?


わたしの中で湧き出る疑問。


「シィ君……寝ぼけてる?」


そうとしか思えなかった。


シィ君は、わたしから顔を逸らして答えた。




「うん………そうみたい」



その瞬間、心臓は誰かに握り潰され、頭は殴られたような衝撃が走った。



ひょっとして、ユカリちゃんと間違えた?


ユカリちゃんの夢でも見てたのかな……。



「シィ君なんて……キライ」



両頬に暖かい物を感じた。


泣いちゃだめ。

頭はそう命令してるのに、涙腺はすっかり力をなくし、ポロポロと雫が頬を伝う。


わたしは立ち上がり、走って教室を出て行った。