シィ君は顔を傾けて、ほんの少し唇を開いて。


わたしの唇を優しく包んだ。


時間にすれば、ほんの2,3秒のこと。


唇を開放されたわたしは、瞬きすら忘れていて

「シィくん……?」

そう言うのがやっとだった。



シィ君は何も言わず、今度は伸ばした腕をわたしの背中に回し、そのままわたしを引き寄せた。


そしてもう一度。


さっきとは違う、長いキス。



シィ君……。


心臓が張り裂けそうなぐらいドキドキしている。

だけど嫌じゃない。


シィ君は少しずつ角度を変えながら、でも離すことなく、わたしの唇の形を確かめるように優しくキスをしている。


いつの間にか自然に目を閉じていた。

シィ君の腕が背中からだんだん上にあがり、わたしの髪に指を絡ませ撫で上げる。


好きな人と唇を重ねる意味がわかった。

他のどの部分とも違う、きっと特別な場所。

敏感な薄い皮膚に与えられた甘い刺激は頭のてっぺんまで到達して、思考を鈍くさせる。

そして自分の力だけじゃ支えられないぐらい体の力が抜けてしまったわたしは、彼に身を委ねるしかできなくて……。


彼の息遣いと唇の温度を感じる。

抱きしめられた体も顔も火照りだす。


シィ君が好き……。

大好き……。

わたしの気持ち、今、唇を通して彼に伝わってる?




ずっとこうしていたい。




そう思っていたのに……