「も……限界」


オレ達は大通りまで出たところで足を止めた。


「喉渇いた。ジュース買ってくるわ。ケンジ、行こ」


ヤマジがケンジの肩を叩いた。


「えー。なんで? オレも?」


「いいから……来いって」


ヤマジはケンジの腕をぐいとつかんで引っ張る。


まだブツブツ文句を言いながらひきずられるように去っていくケンジの後姿を眺めていた。

するとふいに背後からサトシの声がした。


「なぁ……シィ?」


「ん?」とオレは振り返る。


「オレなぁ……ちぃちゃんに、親父の事、話してん」



サトシの父親の話はオレも聞いたことがある。

サトシは私生児で子供の頃から父親の存在をずっと知らずに過ごしていた。

母親から事実を聞かされたのは中学に上がった頃だ。

父親は有名な政治家だということ。

そして、サトシの母親には多額の手切れ金が渡されたこと。

中学の頃、仲間内でもオレだけに話してくれたサトシの出生の事実。




「オレ……なんであんな話したんやろ? あの子、自分のことみたいに傷ついた顔してた」


「そっか……」


この話を聞いた時の彼女の表情はオレにも容易に想像できた。


「なぁ? オレ、なんで、あの子に惚れたんやろ? って、ずっと考えててん」