オレ達は彼女の家の前で立ち止まった。


2階の彼女の部屋だと思われる窓には明かりが点いていなかった。


「なぁ……どうすんの?」


呆れてそう言った時、さっきまで暗かった部屋が明るくなり、薄い色のカーテンの向こうに人影が映った。


「お! あれ……ちぃちゃんちゃう?」


ケンジがうれしそうにはしゃぎ、叫んだ。


「ちぃちゃ―――ん!」


「おい……やめろって。近所迷惑やろ?」


止めようとするオレを無視して、ケンジはさらに声を張り上げる。


「ちぃちゃああああん! 千春っ! 千春――――っ!」


「おい! ほんまにやめろって!」


その時、ガラッという音とともに勢いよく窓が開いた。


中から誰かが顔を出す。



ところがその顔は、オレ達が期待していたものとはまるで違っていた。



「や……やべっ」


「うわ!」


「逃げろっ!」