ダイニングテーブルにはサトシがさっきと変わらぬ位置で座っていた。

オレに気付いているはずなのに、うつむいたまま顔も上げない。


そのままドカドカとサトシの前へ進んだ。


「何があったん?」


サトシを見下ろしてつぶやいた。

できるだけ冷静に言ったつもりだが、自分の中に湧き出る感情には気付いていた。


なんだ?

なんでオレはこんなに怒っている?


「……なんもしてへんよ」


サトシは力なくそうつぶやいてそっぽを向いた。


「んなわけないやろ? ……泣いてたで」


オレの言葉に一瞬体をビクリと反応させたが、相変わらずこっちを見ようともしない。


「だから……なんもしてへんって。キスしただけやん」