「ああ……。

頑張れよ」


サトシの目をまともに見ることもできず、俯いてそう答えた。



木枯らしが吹いて、足元の枯葉がカサカサと音を立て、渦を巻いて宙に舞った。

その動きをただぼんやり眺めていた。

何かの映画でこんなシーンを見たような気がする。


なんだっけかな……。


そうだ。

たしかアレは中年の男が自分の娘の友達に恋する話。

恋に溺れて家庭を崩壊させた上、最後は身の破滅を迎えるんだった……。


あの映画を観終わった時のオレの感想。

たとえ恋をしても、それに溺れるようなことだけはしないでおこうって思ったんだ。

同じ男として女に翻弄される彼の姿はどう見てもかっこ悪かった。


どんなに好きな女ができても、やるべきことはやるし、自分を見失うことはない。



オレは今だってそう思ってる。