慌てて手で頬を拭った。

でも、その手も絵の具がついていたため、余計に頬を汚してしまった。


「ぎゃ……!」


「あはははは。どんくさっ!」


シィ君はお腹を抱えてゲラゲラ笑ってる。


「顔、洗ってくれば?」


「え……? う……ん」


どうしよう……って、戸惑ってしまう。


「いいや。このままで。どうせまた汚れるかもしれへんし」


本心を隠して誤魔化したつもりだった。

なのに……。


「一人でトイレ行くの、怖いんやろ……?」


シィ君にはお見通しだったみたい。

ニヤニヤ笑いながらわたしをからかう。


「ち……違うもん!」


「ついていったろかぁ? またベソかかれたら困るし」


「違うって!」


「ハイハイ」


シィ君はまた楽しそうにニコニコ笑ってた。




お月様だけが知っているわたし達の会話。


月明かりの下……二人で仕上げた絵。


また一つ……


シィ君との思い出ができた。