「なぁ……ここ何色?」


結局シィ君は、食べ終わっても教室に戻ることもなく、そのまま手伝ってくれた。


「えと……赤かな」


わたし達は一緒に作業をしながら、時々ポツリポツリと話していた。


そう言えば、シィ君とこうして二人きりで話すのって、久しぶりかもしれない。


シィ君は理系でわたしは文系。

同じクラスだけど選択科目が異なる授業が多い。

そのせいか、会話はもちろんのこと一日中ほとんど姿を見ないこともある。

だから、こんな時間が、ちょっとうれしい……。



そんなこと考えていた時、さっきまで雲に隠れていた月がふいに顔を出した。

今夜は満月。

廊下の窓から差し込む月明かりは、まるでスポットライトのように、蒼くわたし達を照らし出した。


「ぷっ……」


シィ君が突然吹き出した。


「え? 何……?」


わたしの顔をじっと覗き込んでる。


「ほっぺたに絵の具ついてんで」


「えっ! うそ……!」