草木も眠る丑三つ時……。

その屋敷には亡霊が棲みつき、愛する男を捜し夜毎彷徨う……。

すすり泣く声とともに、ヒタヒタと響き渡る足音。

やがてその音は大きくなり、近づいてくる……。



きゃあああああああああ!



なんてね。


今、自分で想像して怖くなっちゃった。


わたしは今、明日からの学祭に向けての準備に追われている。

うちのクラスはお化け屋敷をすることになり、その背景を任されてしまったのだ。

今日は徹夜覚悟で学校に居残り。


模造紙を繋げた背景画はサイズが大きいので、普通の廊下よりも広い渡り廊下で一人で作業している。

教室には衣装や大道具担当の子達がたくさん残っているんだろうけど、ここにはわたししかいない。


さっきまではアカネちゃんが一緒に手伝ってくれていたんだけど、急に体調を崩して帰っちゃったのだ。


只今時刻は、午後8時過ぎ。


薄暗い廊下での作業はちょっと心細い。


今描いているのは、武家屋敷の血塗られた一室。

破れた障子の向こうから、血まみれの手がはみ出し、無数の目がこちらを見ている。

そんな絵。


やだな……。


ホントに怖くなってきた。


その時、廊下の向こうから何かの音がしてきた。

ダメだと思っても、その音に耳を澄ませてしまう。


――ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…


誰かの足音……?


その音はだんだん近づいてくる。


やがて廊下の角を回り……


柱の影から誰かが顔を出した。




「き…きえあえf◆○※△!」