一人で家に帰れないほどひどいのかなぁ。

だとしたら、連れて帰ってあげなきゃ。


「うん。いいよ。家までわたしが送ってあげる」


「あ……いや。そうじゃなくて」



サトシ君は、何か言いにくそうに口ごもり、それからわたしの表情を確認するかのように、ゆっくりと話した。


「ちぃちゃんさえ良ければやねんけど……。少しの間だけでいいから、そばにおってくれへん?」



ええっ……?


「それって、わたしも家に上がるってこと?」


「うん……。こういう時って、すっげぇ心細いっちゅうか……」


サトシ君の家を思い返してみる。

あの大きな家にお母さんと二人っきりで住んでるんだよね。

モデルハウスのようにキレイだけど、ガランとした無機質でまるで生活感の無い部屋……。

たしか、お母さんは夜のお仕事をしてるって言ってた。

きっと今夜も居ないんだろうな。


たしかに、体が弱っている時に、あの家に一人ぼっちでいるのは不安かもしれないな。



「あかんかな……?」


サトシ君はわたしの顔を覗き込む。

やはり熱があるのか、長い前髪の向こうからほんの少し潤んだ瞳が揺れる。

いつもの冗談ばかり言っている表情とは別人みたい。

なんだか捨てられた子犬みたいに見えてきちゃう。

こんな表情されたら、ほっとけないよ。






「うん……わかった。一緒にいる」