「ハイ。どーぞ」


オレは釣り上げたオレンジ色のゴム風船をちぃちゃんに手渡した。


「ありがと……」


彼女は一瞬うれしそうな表情をしたかと思ったら、すぐにうつむいてしまった。


それにしても、浴衣っていうのは、露出がこんなに少ないにも関わらず、女の色気を最大限にいかす服装だな。

うつむいた細いうなじには後れ毛がかかっていて、彼女の抜けるように白い肌をさらに際立たせていた。

いつもの見慣れた制服姿や、彼女らしいナチュラルな私服姿ともまた違う彼女の一面を見たような気になる。



「おい……ちょっと。シィ」


ふいに、サトシに肩を組まれ、女の子達から少し離れた場所まで連れていかれた。


「そろそろ別行動せーへん?」


サトシは何故か小声でそう提案してきた。


そして……

「ハイ。プレゼント」

そう言って、オレのジーンズの後ろポケットに何かを入れた。


「は? 何やねん?」


オレはポケットに手を入れ、中を探る。

ビニールの質感……取り出さなくても手の感触とその大きさでなんとなく予想はついた。


慌ててサトシの顔を見る。


「これっ……」


「お前、いいかげん男見せろよ?」


どうにも言葉が出てこないオレに、サトシは不敵な笑みを浮かべた。




「オレも……今晩キメさせてもらうから」






はい?


キメる……って何を?