待ち合わせ時間を少し過ぎて到着すると、先に着いていたサトシ君を発見した。

近づいてきているわたしには気付かずに片手で携帯をいじりながら、壁にもたれかかってタバコを吸っている。


サトシ君はそんな風に、ただそこに立っているだけでサマになる人だ。

さっきから、近くにいる女の子の集団がチラチラと彼を見ている。


どうしよ……。


彼からほんの少し離れた場所で足がすくんでしまった。


今になって浴衣を着てきたことを後悔してしまう。

やっぱりヘンだよ……。

なんかはりきりすぎだって思われないかなぁ。


それでも、いつまでも悩んでいてもしょうがないので、おずおずと足を進める。

下駄の音が聞こえるぐらい近づいた時点で、やっとわたしに気付いたサトシ君がハッと顔を上げた。

こっちを見て、呆然としている。


「ごめんね……。遅れて……」


彼の顔をまともに見ることもできず、俯いてそう言った。


――カランッ

下駄の音だけがやけに響く。


それでもサトシ君はまだ何も言わず、わたしをじっと見つめているようだった。

下を向いていても、視線を感じる。

どうしようもなくいたたまれない気分になって、顔が火照りだす。


呆れているのかなぁ。


やっぱ、おかしいよね……。


「あ……あの……ごめんね。ヘンやんね? 浴衣なんか着てしまって。えと、お母さんがどうしても着て行けってうるさくてそれで……あのっ」


焦りすぎて、しどろもどろになってしまった。


うわーん。

もう、帰りたい……。


手にしていた巾着袋の紐をギュっと握ったその瞬間……




「可愛い」




「え?」