「うん。……男の子。でも、友達やで? 彼氏とかじゃないから……」


そのとたん、ヤッターとお母さんとお姉ちゃんは声を上げて大はしゃぎしている。


「こんな日が来るなんてねぇ……。高3にもなって、男っ気ないし、心配やってんよ? 千春もついに男の子とデートかぁ……」


相変わらず人の話しを聞かないお母さんは、どこか遠くを見るような目で呟いている。

もしもし?

お母さん?

だからデートじゃないってば!


「ここは、やっぱ浴衣でしょ?」


お姉ちゃんのその一言に

「そうやね! さっそく出さな!」

お母さんは、夕飯の準備をほっぽりだして、和ダンスの置いてある和室へ向かった。


「えっ! いいよ! 浴衣なんて、暑いし……」


お母さんの後ろについていきながら、必死に断った。


だって、浴衣なんか着ていったらさ、

いかにも気合入ってますって感じじゃない?


恥ずかしいよ……。


そんな抗議も虚しく、お母さんとお姉ちゃんはキャーキャー言いながら浴衣を出し始めた。



「あー。いつかこんな日が来るだろうと、千春のために浴衣仕立ててたのよねぇ……。良かったー」


ええ!

わざわざ仕立ててたんだ。

いったい、いつの間に……?