サトシは「フッ……」とため息をつくと、呆れたような顔を向けた。


「お前なに、“夢見る乙女”みたいな発言しとんねん。ヤって初めて伝わる感情ってのもあんねんで。肌で気持ちを確かめ合う……みたいな?」


「だからって、別に急がんでもええやん。なんか、急かされたら“ヤリたい”だけなんかな……とか思うし……それに……」



「そういうことちゃうやろ?」



サトシはオレの言葉を遮った。

立ち止まってじっとこちらを見据えている。


「別にユカリは、ただ“ヤリたい”わけちゃうやろ? 不安なんちゃうの? お前のそういう態度が。ヤル、ヤラへんは自由やけどな。安心させてあげろや」


サトシの言葉は、オレの心臓のど真ん中を貫いた。


薄々わかっていた。

オレの煮え切らない態度がユウを不安にさせていたこと。


『彼女のことを大事にしたい』


そう思ってはいたけど、オレはそれを口にしたわけでもない。

自分のことに精一杯で、彼女の気持ちまで思いやる余裕なんてなかった。



「それとも……」


サトシは彼特有の、全てを見透かすようなするどい眼差しでゆっくりと口を開いた。


「お前がユカリを抱けへん理由は、まだ他にあるんか……?」