夏休みに入り、わたしはアカネちゃんが通う塾の夏季集中講座に参加している。

毎日朝から塾で勉強しては、帰りに近くのファーストフード店に寄り道して、勉強半分、おしゃべり半分って感じで二人で過ごすのが最近の日課になっていた。


「いいなぁ……ちぃちゃんの髪」


「え?」


ふいにそう言われて、問題集から顔を上げた。

ストローでジュースを飲みながら、アカネちゃんはわたしの方を見ている。


「そっかなぁ……」


照れながら誤魔化してみたものの、まんざらでもなかった。


シィ君の好きなタイプの女の子に近づきたくて去年からずっと髪を伸ばしていた。

もちろんいくら伸ばしてもどうにかなるわけじゃないことはわかっていたし、今さら、彼の為に伸ばしているつもりもない。

でもなんとなく切れないでいるのは、認めたくないけど、まだどこかに“未練”があるからかもしれない。