「んー。でも、シィの気持ちもわかるなぁー」


ケンジはスナック菓子をバリバリと頬張りながら、そう言った。

今、ケンジとオレはサトシの家に来ている。

そしてさっきから3人で、オレとユウがいつまでも一線を越えられないことについて話し合っていた。
(余計なお世話だっつの)


「だってさぁ。シィは“初めて”やろ?ユカリは、何人もの男と付き合ってんねんでー。オレやったら、自分が“初めて”やのに、女があまりにも慣れてたら、なんか怖気づくっつの? てか、それ以前に『下手くそ!』とか言われたらマジへこむし」


能天気な口調で話すケンジを無言でジロリと睨んだ。

“初めて”を強調すんなっつの。

しかも何故オレが“下手”だと決め付ける?

「じゃあ、“上手い”のか?」と聞かれても困るけどさ……。



「そうかなぁ……? オレは楽やったけどな。色々教えてもらえるし」


サトシは相変わらずの余裕の発言。

なるほど……。

サトシの初体験の相手は経験豊富な女だったってわけね。

間違いなく年上だろ?

なんか、めくるめく官能の世界が想像できそうだ……。



「お。それいいやん。ここはユカリにどーんと任せてみろって、な?」


ヒト事だと思って、ケンジはケラケラ笑いながらオレの背中を叩いた。

何なんだ……さっきからのこの屈辱感は。

先に経験した者がそんなに偉いのか?



「いや……オレが悩んでんのは、そういうんじゃなくてさ……」