「ほんとわざわざごめんなさいねー。どうせ、この子がぼけっとしてたんでしょ? そんなこと全然気にしなくていいのに。ボールぶつけたぐらい、どーってことないんだから」


オレが一通り事情を説明して頭を下げると、ちぃちゃんのお母さんは、そう一気にまくし立てた。

そして、まだ口をつけていなかった紅茶の入ったカップに目をやった。


「あ……。冷めちゃったね。おかわり入れるね」


「あ……いえ。あの……大丈夫です」


いや、ほんと。

謝ったらすぐに帰るつもりだったし。

つか、ほんとお茶とか飲む気分じゃないし。


「んー。香椎君は、コーヒーの方が好き?」

「は……?」


いや、だからそういう問題じゃなくてさ。


「うんうん。“コーヒー”って感じだもんね。じゃ、入れてくるねー」


有無を言わさず、さっさとカップをさげて、キッチンへと行ってしまった。


絶対人の話聞かないタイプだな……。


どうやらちぃちゃんのお母さんはとてもマイペースな人のようだ。

丸顔でクリっとした大きな目は彼女にソックリ。
(いや、ちぃちゃんがお母さんにソックリだと言うべきか……)


彼女の将来の顔が容易に想像できた。