家の前に着いても、わたし達はまた揉めていた。

シィ君は、どうしても怪我のことをうちの親に謝りたいと言ってきかない。


「そんなんいいよー。もう、ほんと大丈夫だから。それに、あれはシィ君のせいじゃないやん。ボケっとしてたわたしが悪いねんもん」


気持ちはうれしいけど……。

そこまでしてもらうのは、なんだか申し訳ない。

あんな場所で立ち止まっていたわたしに非があるのに……。


だけどシィ君もひこうとしない。


「あかんて。それに、念のためちゃんと病院にも行ってもらいたいねん。だから、ちぃちゃんの親にオレから事情を説明させて?」


そう言って顔を覗き込んでくる。

きっとすごく責任感じてくれてるんだと思う。

でも、本当にそこまでしてもらうわけにはいかないよ。


わたし達が家の前で押し問答を続けていたその時……。


ガチャ……という音とともに、玄関の扉が開き、中からお母さんが顔を出した。


「話し声がするから、どうしたんかなぁって思ってんけど……」


不思議そうな顔をしていたお母さんはすぐにシィ君に気付いた。


「あら。お友達……?」


「同じクラスの香椎君」


しょうがないので、わたしはお母さんに紹介した。

シィ君はペコリと頭を下げた。


「あの、オレ……」

シィ君が何か言いかけたその時、お母さんが口を開いた。


「こんなとこで喋ってないで! うち、入んなさい!」


「えっ」

その言葉にひどく焦る。


ちょ……ちょっとおおおお。

お母さん!

ダメだってば!


そう、目で訴えてみるものの、全く伝わらない。

結局、シィ君はうちに入ることになってしまった。



なんか嫌な予感がする……。