「うーん……」


わたしはさっきから渋い顔をして黒板とにらめっこしている。



クラス対抗の球技大会が行われるのだ。

数種目のうちのどれか1つには出なければならない。

正直、この球技大会っていうのが嫌いだった。

運動が苦手なわたしにとっては、少なくとも楽しめるものではなかった。

黒板には種目が書かれていて、各自が希望の欄に名前を記入していく。

だけど、なかなか手を動かすことができない。


ど……どうしよ。

得意な物が何もないよぉ……。


チョークを持ったままウロウロしていたその時……。


横から手が伸びてきたかと思ったら、ひょいとチョークを奪われた。


「シィ君!」


なんか、嫌な予感がする……。


「悩みすぎ!」


シィ君はニッと笑うと、わたしから奪ったチョークで黒板に書き込んでいく。


「ちょ……勝手に……!」


抵抗しようとするジタバタするわたしを片手であしらいながら、 バレーボールの欄に“松本千春”と大きく書いてしまった。


「ひどいー! 勝手に書かんといてよー!」


「もたもたしてる方が悪いねん。ほんまトロいな」


ムカッ。

ぷぅと頬を膨らませて睨んでみたものの、シィ君は悪びれる様子も見せない。

そんなわたし達のやりとりに、周りにいた子達がクスクス笑っている。



なんか最近思うんだけど。


わたしって、シィ君にいじめられてない?