「あの二人、付き合い始めたらしいね」


廊下の窓から外を眺めながら、マリちゃんがそうつぶやいた。


「うん」


わたしはコクンと頷く。

ここからはちょうど二人の様子が見えた。

シィ君とユカリちゃん。

シィ君は自転車を押しながら、徒歩通学のユカリちゃんはその側を寄り添うように歩いている。



あの雪の日から2週間。

シィ君の想いも、ユカリちゃんの想いも叶った。


目立つ二人だから、付き合い始めたという噂はあっという間に広まった。


『また友達の彼氏を奪ったらしいよ』なんて陰口を言う人もいるらしい。


友達っていうのは“わたし”のことだと思う。

だけど、正確には彼氏ではなく元カレだ。

それに、何よりも決して“奪った”わけじゃない。

二人の想いが通じあっただけ。

そして、それに手を貸した張本人はわたしだ。


人の噂なんていい加減なもんだな……。

なんて、つくづくそう思う。

事実はたった1つなのに。




「マリ!」


マリちゃんの彼氏が少し離れたところからマリちゃんを呼ぶ声がした。


「ちぃちゃん、ごめん。わたしも帰るわー」


「うん。バイバーイ」


手を振って、仲良さそうに帰っていく二人を眺めた。



それからもう一度窓の外を見る。

また雪が降り出した。


寒いはずだなぁ……。



わたしは廊下を歩き出した。